【民法】連帯債務の絶対効・相対効について
はじめに
連帯債務には、債務者のうち誰かの行為が、他の債務者に影響を与えるか・与えないかという、絶対効・相対効という重要な概念があります。影響を与える場合が絶対効、影響を与えないのが相対効です。
例えば、複数人連帯の貸金債務があるときに、債務者の一人がお金を返済すれば、他の債務者はもう払わなくてよくなります。こういったケースが絶対効です。この場合、返済した債務者は、他の債務者に対して各自の負担分を請求することができます。債務者間の請求についてもケースに応じてルールがありますので、それを整理していきましょう。
連帯債務の絶対効
第441条 第438条、第439条第1項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
連帯債務は原則として相対効です。以下が絶対効です。絶対効を覚えた方が覚えることが少なくなりますので、こちらを覚えましょう。
- 弁済
- 更改
- 相殺
- 混同
弁済
債務者の誰かが弁済をしたとき、債務は消滅するので絶対効です。全部ではなく一部の弁済でも、絶対効になります(例:ABC90万円の連帯債務でAが30万円を弁済したとしても、BCに対して10万円ずつ請求することが可能です)。
更改
債務者の誰かが更改を行ったときです。貸金300万円の連帯債務を持つABCのAが、債権者甲と車の引き渡しに契約を更改したとします。この場合、残りのBCの債務は消滅します。Aが自動車を引き渡すと、債務を弁済したことになりますので、AはBCに対して100万円を請求できます。
相殺
債務者の誰かが債権者に対して相殺を行ったときです。貸金300万円の連帯債務者ABCのうちAが、債権者甲に車を料金後払いで売っていて、売掛金債権300万円を有していたとします。このときに、Aがこの売掛金債権で甲に対して相殺を行うと、BCの債務も消滅することになります。
このケースのときに、Aが相殺を行う前に、甲がBCに対して請求をした場合、BCはAの負担部分、100万円を限度に請求を拒むことができます。BCは200万円を限度に弁済すればよいことになります。
混同
債権者の一人と債務者の一人が同じになるときに、混同が生じます。例えば、連帯債務者ABCのうち、Aが債権者甲の親子というケースのときに、甲が死亡してAが甲を相続したとします。このとき、Aが甲の債権も相続します。これが混同です。
Aが負担する債務はこれで消滅し、BCの連帯債務も消滅します。結果としてAが全額弁済したのと同じ結果になるので、AはBCに対して100万円ずつ求償できます。
最後に
連帯債務も基本は相対効です。絶対効を覚えて、残りは相対効、という覚え方をするのがポイントになるでしょう。