あと2点の壁を超える行政書士試験勉強ノート

2021年の行政書士試験をあと2点で不合格になった筆者が、今年こそ合格を目指していく勉強ノート

【民法】多数当事者の債権・債務について。対外関係(債権者と債務者の関係)の整理

はじめに

本稿では、多数当事者の債権・債務について整理していきます。

抽象的なテーマで似たような言葉が入り組むので混乱しがちなテーマですが、順を追って整理していきましょう。まずは単純な債権者と債務者の関係について整理していきます。

 

数人の債権者や債務者がいるときのスタンダードなケース

本来、債権は数人の債権者や債務者がいる場合は、原則として分割債権・分割債務です。

分割債権・分割債務の原則

第427条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う

 

債権者が複数いる場合は、等しい割合分の債権をそれぞれが有し、請求できることになります。そして、債務者が返済する債務も、それぞれの等しい割合のみです。

 

例えば、債務者・甲がABCの3人から300万円を借りた場合、ABCが請求できるのは、それぞれ100万円のみです。そして、甲が返済できるのはそれぞれに対しての債務100万円ずつのみです。

 

この原則に、例外的に適用されるのが連帯債権・連帯債務、不可分債権・不可分債務です。

 

連帯債権と不可分債権

まずは連帯債権の条文を見てみましょう。複数人債権者がいるときの例外的な規定です。

連帯債権

第432条 債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

 

こちらのポイントは、性質上可分(例えば金銭など)であることと、法令の規定又は当事者の意思表示によることです。従前のとおり、本来、債権者が複数いる場合は、等しい割合分の債権をそれぞれが有し、請求できることになります。

 

しかし、ABC3人が共同して、甲に300万円を貸した場合、当事者間でABCそれぞれが満額300万円を甲に請求できると合意すれば、甲に対して300万円請求できることになります。300万円の一部(たとえば100万円)を請求することも可能です。これが連帯債権です。

一方、甲はABCの誰か一人に300万円を払えば良いことになります。

不可分債権

次に不可分債権の条文を見てみましょう。こちらは債権者が複数人いて、債権の性質が不可分(例えば車など)のときに適用される規定です。

第428条 次款(連帯債権)の規定(第433条及び第435条の規定を除く。)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。

 

不可分債権のときは、債権者は全債権者のために全部の履行を請求することができます。例えば、ABCが3人で共同で甲から車一台を購入したとき、AはABCのために甲に対して車を引き渡すよう請求できます。

一方、甲はABCの誰かに車を引き渡せば良いことになります。

連帯債権との違いは、当事者の意思表示などを要しないという点です。債権の性質で自動的に適用されます。

 

以上、連帯債権と不可分債権の説明でした!

連帯債務と不可分債務

次は連帯債務と不可分債務について見てみましょう。債務者が多数のときに適用されるのが連帯債務と不可分債務です。これまで見てきた債権者が複数のときの反対版です。

連帯債務

民法第436条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

 

こちらのポイントは、連帯債権と同様、性質上可分(例えば金銭など)であることと、法令の規定又は当事者の意思表示によることです。

連帯債務の特約がなければ、本来は分割債権となります。

 

連帯債務の一例として、債権者・甲が債務者ABCに対して3000万円貸していたとします。これが分割債務だと、ABCがそれぞれ1000万円の債務を持つことになり、甲はそれぞれに対して1000万円しか請求できません。もし、B・Cが破産すると、甲はAに対して1000万円しか請求できなくなってしまいます。

これが連帯債権になると、もしB・Cが破産しても、Aに対して3000万円を請求することが可能になります。債権者としては、連帯債務にした方が有利になります。

 

不可分債務

次に不可分債権の条文を見てみましょう。こちらは債務者が複数人いて、債務の性質が不可分(例えば車など)のときに適用される規定です。先ほどの不可分債権の反対版です。

第430条 第四款(連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く。)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。

 

例えば、甲がABCの3人から車一台を購入したとき、甲はABC全員に対して車を引き渡すよう請求できます。ABC全員が甲に対して車一台を引き渡す義務を負うのです。ABCの誰かが甲に車を引き渡せば債権は消滅します。

連帯債務との違いは、当事者の意思表示などを要しないという点です。債務の性質で自動的に適用されます。

最後に

この記事では多数当事者の債権・債務について、対外関係(債権者と債務者の関係)について書きました。

多数当事者の債権・債務については、絶体効・相対効(他の債権者や債務者のアクションが残りの債権者や債務者に影響を及ぼすか否か)や、内部関係(債権者同士・債務者同士の関係)など、他にも重要な論点がありますが、それは別稿にて触れることにします。