【民法】保証人の求償権について。それぞれのケースについての整理
はじめに
民法では、主債務者(保証人がいるときは主債務者と呼ぶ)が借りたお金を払わないなど、債務を履行しない場合に、保証人に代わって債務を履行させることができます。
保証人が弁済したときは全額を主債務者に対して返還請求できますが、求償できる範囲はケースによって異なります。本稿ではそれを整理していきます。
主債務者の委託を受けた保証人
第459条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。
要するに、主債務者から頼まれて保証人になった人です。頼まれた人なので一番優遇されます。
現実に支出した額、つまり元本と利息の合計、弁済してから求償するまでに追加で生じた利息、弁済にかかった手数料なども請求することができます。
ただし、弁済に支出した財産額が、債務の額を超える場合は、債務の額を上限に求償できます。
例えば、100万円の債務を150万円の自動車で代物弁済しても、求償できるのは100万円までです。
また、委託を受けた保証人には事前求償権も認められます。事前求償権は、保証人が弁済前に求償を行える制度です。
主債務の弁済期が到来した場合や、保証人が債権者に弁済するよう判決を受けた場合などに行使できます。
主債務者の委託を受けていない保証人
主債務者に頼まれてもいないのに勝手に保証人になった人です。
一見、勝手に保証人になられたら困るのでは、とも思いますが、主債務者にとっても「頼んではいないが、保証をしてくれて助かる」と考えるケースと、「頼んでもいないのに、勝手にされても困る」と考えるケースがあります。
両方について見ていきましょう。
主催者の意思に反しない保証人
こちらは主債務者が「保証をしてくれて助かる」と考えるケースです。弁済時に、主債務者が利益を受けた限度、つまり支払わないで済んだ額で求償できます。
つまり元本と利息の合計のみです。求償するまでに加えて発生する利息や、弁済にかかった手数料は含まれません。
事前求償権はありません。
主債務者の意思に反する保証人
こちらは主債務者が「頼んでもいないのに勝手になられても困る」と考えるケースです。
保証人が「求償したとき」に、利益を受けている限度=支払わなくて済んでいる金額のみ請求できます。
もし求償するまでの間に、主債務者が反対債権を取得したり、免除を受けた場合は、求償することができません。
こちらも事前求償権はありません。
最後に
保証人の求償権は委託の有無、主債務者の意思に反するかどうか、などで分かれます。
簡単に言えば「頼まれて保証人になったか」、「勝手に保証人になったか」、「勝手になったけど主債務者はそれを良しと思っているか」、などで分かれます。
そこを突き詰めれば、どんなケースの保証人が一番優遇され、どこまで求償できるか・できないか、などを考えやすくなると思います。