あと2点の壁を超える行政書士試験勉強ノート

2021年の行政書士試験をあと2点で不合格になった筆者が、今年こそ合格を目指していく勉強ノート

【民法】連帯債務者間の求償権

はじめに

連帯債務者の誰かが弁済を行った場合、「その人だけがすべてを負担して、他の人は払わなくてよし」、となってしまうと不公平と言えます。そんなときに弁済を行った債務者は他の債務者に対して、各自の負担部分を請求することができます。これが求償権です。

基本的なルール

第442条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。

 

連帯債務者の誰かが弁済を行った場合、最終的に誰がどのぐらい負担するかという割合(負担部分)について定めていれば、弁済を行った債務者は残りの債務者に対し、割合に応じて求償することができます。負担部分は特約ですので、当事者間で定めます。

 

負担部分について特約がない場合、それぞれ等しい割合で負担することになります。

例えば、連帯債務者ABCが甲に対して貸金債務300万円を負っていた場合に、Aが300万円を弁済した場合、BCの連帯債務も消滅します。このときAはBCに対して100万円ずつ請求することができます。

 

債務者の誰かが負担部分を超えない範囲で弁済した場合でも、負担部分の割合に従って求償できます。

先ほどのケースで、Aが90万円だけ弁済したときでも、AはBCに対して30万円ずつを請求することができます。

通知を怠った求償の制限

連帯債務者の誰かが弁済をしているにもかかわらず、そのことを他の債務者が知らないと、また弁済を行ってしまう可能性があります。そうなると問題が複雑になってしまいますので、弁済を行っても他の債務者に対して通知を行わない場合、求償ができなくなることがあります。これが求償の制限です。

事前通知を怠った場合

第443条 他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

 

例えば、ABCが甲に対して300万円の連帯債務を負っており、Aは甲に対して100万円の債権を持っています。

 

BがAとCの存在を知りながら、二人に対して弁済することを事前に通知せず弁済し、Aに100万円の求償を行った場合、Aは甲に対する100万円の債権を使って相殺すると主張することができます。

Bは甲に対して、Aが相殺できた100万円を請求することができます。

事後通知を怠った場合

第443条2 弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。

 

 

ABCが甲に対して300万円の連帯債務を負っています(負担部分は平等)。

Aが甲に弁済しました。AはBCの存在を知りながら、BCに対し、弁済をしたと事後の通知を行わなかったので、それを知らないBも甲に対して300万円を弁済しました。AはBに対し、負担部分100万円を求償し、BもAに対し100万円を求償しました。

 

この場合、Bは自らの弁済を有効なものであったとみなすことができます。事後の通知を怠ったAはBに100万円を求償できず、善意で弁済したBがAに対して100万円を請求することができます。

事前事後の通知をいずれも怠った場合

ABCが甲に対して300万円の連帯債務を負っています(各自の負担部分は平等。他の連帯債権者の存在も知っている)。

Aが甲に弁済し、連帯債務者BCに対して事後の通知をしなかったため、善意のBが甲に300万円を弁済しましたが、Bは事後の通知を行いませんでした。この場合、BはAに対して求償できません。

無資力者がいる場合

第444条 連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。

 

ABCが甲に対し300万円の連帯債務を負っています(負担部分は平等)債務者Aは無資力です。

その場合、Aが払えない分の100万円は、BCで負担部分に応じて分割して負担します。Aが払えない100万円を、BCで50万円ずつ負担し、一人150万円ずつ負担することになります。

連帯債務者の1人が債務を免除された・時効が完成した場合

連帯債務者の1人の債務が免除されたとき、時効が完成したときも、その効力は他の連帯債務者に影響を及ぼしません。債務者の誰かが弁済を行えば、免除や時効が完成した債務者に対しても求償することができます。

ABCが甲に対して300万円の連帯債務を負っているとします(負担部分は平等)。甲がAに対して債務を免除しました。免除のあとでも、Bが弁済を行えば、A、Cに対して100万円ずつ求償することができます。

同様の連帯債務がある状態で、Aの債務が時効消滅しました。時効消滅のあとでも、Bが弁済を行えば、A、Cに対して100万円ずつ求償することができます。

最後に

いわゆるほうれんそう(報・連・相)は仕事でも生活でも大切なことで、これさえきちんとやっておけば避けられたトラブル、というのはよくあることです。

法律のうえでも通知を怠ることで、求償ができなくなるなど不利益が返ってくるケースがあります。求償権もパターンごとにきっちりおさえておきましょう。