あと2点の壁を超える行政書士試験勉強ノート

2021年の行政書士試験をあと2点で不合格になった筆者が、今年こそ合格を目指していく勉強ノート

【民法】連帯債権の絶対効・相対効について

はじめに

連帯債権には、債権者・債務者のうち誰かの行為が、他の債権者に影響を与えるか・与えないかという、絶対効・相対効という重要な概念があります。

影響を与える場合が絶対効、影響を与えないのが相対効です。

 

本稿では絶対効と相対効のケースについて整理していきます。

 

※連帯債権と連帯債務については、別稿で記述しております。

gyouseisyosi-study.hatenablog.com

 

連帯債権の絶対効

連帯債権は原則として相対効です。

第435条の2 432条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。ただし、他の連帯債権者の一人及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債権者に対する効力は、その意思に従う。

 

一人の債権者が行った行為は原則として他の債権者に対して影響を及ぼしません。例外として432条~434条に挙げられている以下の行為が絶対効です。逆にこちらの行為以外は相対効になりますので、まずこれをおさえましょう。

  • 履行の請求(時効の完成猶予や更新を含む)
  • 弁済(代物弁済や供託を含む)
  • 更改
  • 免除
  • 相殺

 

履行の請求(時効の完成猶予や更新を含む)

連帯債権者の誰かが請求を行った場合、残りの債権者も請求したことになります。

 

連帯債権者AB、債務者甲がいるとき、Aが甲に対して請求を行った場合はBも請求したことになります。

 

Aの請求で時効の完成猶予や更新がされる場合、Bにも同様に影響します。

弁済(代物弁済や供託を含む)

債務者が連帯債権者の誰かに弁済を行った場合、弁済額の範囲で他の債務者の債権も消滅します。

 

連帯債権者ABに対し、債務者甲がA対して全額弁済を行った場合は、Bの債権は消滅します。

更改

更改は当事者が元の債務に代えて契約を変更したり、債務者・債権者が別人と交替したりすることをいいます。

 

例えば、連帯債権者ABCが、債務者甲に対して300万円の貸金債権を持つとします。Aと甲との間で、車一台で弁済するとの契約に更改しました。

 

その場合、甲はAに300万円を返さず車を引き渡せばよくなります。BCは甲に対して、Aの受け取れる分100万円を請求できなくなります。

 

甲がAに対して車を引き渡した場合、AはBCに100万円を分配する必要があります。甲がBCに対して200万円を返済した場合は、BCはAに対して100万円を渡す必要はありません。

免除

免除は債権者が債務者に対し、債務を免除する意思を表示することです。例えば金銭債権ならば、もう払わなくて良いよ、と債権者が債務者に意思表示してあげることで債権が消滅します。

 

連帯債権者ABCのうち、Aが甲に対して貸金債権300万円を全額免除したとします。

 

この場合、甲はAに弁済する必要はなくなります。そうすると、BCはAが受け取れるはずだった100万円については、甲に対して請求できなくなり、200万円までしか請求できなくなります。

相殺

相殺は、債務者が債権者に対し、弁済期にある同種の債権を有する場合に、その債権と債務を対等な範囲で消滅させる意思表示です。

 

例えば、AがBに対して100万円の貸金債権を持つときに、BもAに対して100万円の貸金債権を持つとします。その場合、お互いの100万円の貸金債権をもって、金銭のやり取りをすることなく、双方の債権・債務を消滅させることができます。

 

連帯債権者ABCが債務者甲に対して、300万円の連帯債権を持つとします。そのうちAが甲から車を300万円で購入し、甲に対して300万円の代金債務(甲にとっては代金債権)が生じました。Aがこの代金債務と、甲に対して持つ債権を相殺すると、BCの債権も消滅することになります。

 

最後に

連帯債権の基本は相対効です。絶対効を中心に覚えると、覚えることが少なくて覚えやすくなります。